掲載記事は シュピンドラー千恵子の執筆により、
オートメレビューオフィシャルサイト「安全工学講座」に連載中です。

グローバル時代の生き残り戦略

22) 企業リスクマネジメント 第12話 〜あわてる政治家〜

昨年、次々に起きる派手な動きで警察に目をつけられていたライブドアに、予告なく家宅捜索が入り、全社員のPCと社内サーバーが押収された。あまりにも突然だったせいか、社内メールの内容が消された痕跡はなかったようだ。見られてまずいことをしていた人たちにとって、これほど強烈な打撃はないであろう。豪語していた堀江貴文氏も自分のPCに手が伸びたとき、「仕事にならないから持っていかないで。ハードディスクを後で渡すから」と懇願したそうだが、その場でコピーされ、メールを抹消する暇もなかった。10年前では考えられないようなスピードで堀江氏が逮捕されたのも、これらエビデンスのお陰といえる。

そしてこの度、民主党により”送金メール”が公開された。内容は、堀江氏が自民党武部幹事長の二男に3000万円を至急送金するようにと誰かに依頼したものであった。「選挙コンサルティングで処理すること」また、「振込先は前回と同じ」という指示があった。武部幹事長といえば、堀江氏が衆議院選挙戦に出馬した時に、応援に駆けつけた人であり、堀江氏を「私の弟、息子」とまで持ち上げた人である。この”送金メール”公開の新聞記事をみた一般の人は「やっぱり裏(政治家)とつなげっていた」として、仰天するわけでもないであろう。にもかかわらず、自民党はライブドア事件の火消しに躍起であり、公開された”送金メール”について、偽造だ、ねつ造だ、信憑性がない3000万円は受け取っていない、事実無根であると繰り返す。ついてはこれを「根拠のない発言とし、(指摘した民主党の永田氏は)懲罰に値する」として懲罰動議を提出している。またそれに対して民主党は永田氏を根拠なく批判したとして自民党相沢幹事長代理の懲罰動議を提出している。結果的に両党は、相手議員の懲罰動議を提出し合い、真っ向から対立した形になっている。

なんだか論点がずれているように思うのは私だけであろうか。そもそも、嫌疑をかけられた人が事実無根と主張するだけで事実無根となるならば、この世に犯罪者はいないことになる。拘置所の堀江氏も否定しているらしいが、それは無実の証明にはならない。党がただ「無実だ、無実だ」と感情的になって党員を守っているかのごとく国民には映る。無実の立証をするために、自民党あるいは武部幹事長自らが、国政調査権を行使して真偽を追及するべきではなかろうか。06 年初頭に日本市場に激震をもたらし、これほど大きな社会的問題に発展したライブドア事件を振り返ると、国政調査権を直ちに発動させ、真相を国民に公開することが彼らのミッションではないのか。

金と権力を行使する経営者と政治家は、互いのメリットのために相手を利用しようとする傾向は払拭できない。選挙応援についても、「個人的に応援しただけ」と今では往生際の悪いことを言っているが、なぜそこまで入れ込む必要があったのだろうか。3000万円送金は別としても、何らかの形で蜜月の付き合いをしていたのかもしれない堀江氏の周りの政治家は、今となれば保身に必死である。また金と権力の経営者は、そのパワーが切れた時に孤独になる。堀江氏の逮捕が想定外だったのは、もしかしたら政治家なのかもしれない。

国家公務員法では離職後2年間は退職前のポストと密接な関係にある営利企業には再就職できないことになっているにもかかわらず、独立行政法人等外郭団体への天下りやそれを迂回した民間企業への天下りは可能とし、5兆円以上の補助金という税金の無駄使いをしている。規制の穴を利用している彼らは、法の抜け穴を突いた堀江氏の奇策経営を批判する立場ではない。政治家や官僚が、私利私欲を重視するようなガバナンス不在の国家自体を変えない限り日本は三流国家であり、国民の信頼は永遠に得られないだろう。

(06年2月22日掲載記事)